環境ホルモンとは、環境中に存在して生体に入るとホルモンと似た作用をしてホルモンの分泌系を撹乱し、生殖機能などに悪影響を与えると考えられている化学物質の総称です。
環境ホルモンの動物に対する影響は1950年代から英国や米国を始めとする地域で出ていたが、その当時は原因物質がよく分からない場合が多く、環境ホルモンの影響を受けた動物は、カワウソ、ミンク、カモメ、ワニ、コイ、巻き貝など多種類に及んでいました。そしてこれらの動物に生殖異常、孵化しない、インポセックスなどの症状が出てきていました。 最近では環境ホルモンの動物に対する影響は世界的に広がってきています。日本でも海岸や多摩川で巻き貝やコイにインポセックスや精巣異常が起こっています。これらの影響を及ぼす原因物質としては、DDTなどの殺虫剤、PCB、ダイオキシンを始め船底塗料や避妊薬のピル、界面活性剤などが推定されています。環境ホルモンの人への影響についてはこれまでに明確になっているのは、流産予防に合成女性ホルモンを使用した母親から生まれた女性での膣ガンだけです。 最近よく話題に上がっている精子数の減少や精子の活動性低下に関して、環境ホルモンによる影響の有無については現状では疑わしいが確定はされていない状態です。
内分泌撹乱作用が疑われる化学物質の数は、約70物質ある。 これを用途別に分類すると、殺虫剤・農薬(60%)、プラスチックの原材料・添加剤(20%)、その他(重金属、PCB、ダイオキシン、合成女性ホルモンなど)となる。 米国イリノイ州環境庁(2月'97)では、これら約70種類の環境ホルモンについて、その影響の確実性から3つに分類しています。
影響有り:DDT,ダイオキシン類、DES、PCB、ノニルフェノール、トリブチルスズ(計20種類)
可能性大:ビスフェノールA、カドミウム、鉛、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、スチレン、PBB(計29種類)
疑わしき:アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジ-n-ブチル、オクタクロロスチレン(計25種類)
消費者や流通業界そして食品業界さらには成型加工業界においても環境ホルモン問題の対策として容器包装材料にも一部で変化が出始めています。
材質変更:ポリカーボネート→PP 、ポリカーボネート→PP/PA、PP/EVOH/PE、発泡ポリスチレン→紙
溶出防止:発泡ポリスチレン→発泡ポリスチレン+表面PPラミ
耐熱性向上:耐熱A-PET(60~70℃ → 120℃)
海外では、1972年に世界保健機構などがホルモン作用化学物質についてまとめを行い、内分泌系への影響の問題を指摘したのが最初と言われています。1991年の米国の会議によって問題認識され、1996年に入り米国の諮問委員会やOECDが環境ホルモンの検査方法の開発に着手しました。1998年に入り英国では環境庁が工業界に対して自主規制を要請、スイスでの法規制等の動きがあります。日本国内における環境ホルモンに対する取組みは海外に比べて約7年遅れていると言われていますが、1998年に入ってから動きが活発となっています。 今年3月には厚生省が食品衛生調査会の毒性、器具容器包装合同部会を開催し、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレンおよびポリ塩化ビニールの安全性について現状把握と審議がなされました。 5月には、環境庁が環境ホルモン戦略計画'98として環境庁の対策方針をまとめ、いよいよ本格的な取組みが始まろうとしています。